気がかりなことは認知機能に悪影響

2年くらいまえから「バーチャル」といって、夢の世界と現実の世界の境界があいまいになってきました。

例えば去年の8月。
「畑に行ってニラを取ってきた。ボールに水をいれてニラを浸して台所に置いておいた。」
私たちにニラを渡そうと畑から取ってきたというのです。
でも、台所にニラがないので、本人もバーチャルだということに気が付きました。

「一日に何回もバーチャルを見るんで、困っている。」
そのころ言っていました。

アルプスの尾根を父が歩いている夢。
尾根の下が川になっていて、川に沿って歩いて行くと途中で道がなくなってしまう。
しかたなく川の中を歩いて進むという夢。
「夢」であれば現実でないことは自覚できますが、あたかも現実に体験した出来事に思えるそうなのです。

そして、今日。
「”魔”(悪いこと)が来ている。
家の基礎と柱をつないでいる鉄をカットして家を移動しようとしている。
そう、書いてあったんだ、月曜日から今日(水曜日)までの新聞の声の欄に。」
「どこの家を移動しようとしているの。」
そういうと、それは私の家だというのです。

どうして、このようなバーチャルを現実と父が思い込むのか、その理由に心当たりがあります。

6月にシロアリ対策のため工務店に依頼してユニットバスの設置、洗面所の改装、和室の床の張り替え、シロアリ防蟻対策などをして、200万円以上かかりました。
父の心の中に、工事を請け負った工務店が悪徳業者ではないか、という懸念が拭い去れなかったのです。
悪徳業者に私が200万円以上もの大金を払ったのではないかと疑心暗鬼になっているのです。

シロアリ対策をしたときに私が悪徳業者にだまされたのではないかという気がかりが心の奥底に沈殿していたのでしょう。
それが、自分の経験とリンクして、懸念が増幅し、このようなバーチャルを見たのだと思います。

今私が住んでいる家は、父が苦労して建てた家です。
自分の納得のいく家を建てたいという思いから、その時、業者との丁々発止のやりとりがありました。

「おじいちゃん、この家を建てた時、担当営業のシバタさんに相談しながら建てたでしょ。
シバタさんは、その時の家を建てる思いの真剣なおじいちゃんが忘れられなかったようだよ。
10年前、シバタさんが”おじいちゃん、元気ですか”って訪ねてきてね。
その時、シバタさんに屋根の葺き替えや外壁塗装の相談をしたんだ。
シバタさんはとっくに定年退職されていたけど、もと部下であったTさんを紹介してくれてね。
そのTさんの工務店に屋根の葺き替えや外壁塗装を頼んだんだ。
その時の職人さんが真面目で腕のある人ばかりだったんで、それから細かいこと(水漏れなど)はその工務店に頼んでいるんだよ。
シロアリ対策するときは大きな金額になるので他からも見積もりを取ったんだ。
そこでちゃんと見比べて、やっぱりこの工務店に頼もうと決めたんだ。
おじいちゃんもシバタさんの人柄を良く知っていると思うけど、やっぱり、シバタさんが紹介してくれたTさんの会社はキチンとしていたよ。
こうしてTさんに出会えたのも、おじいちゃんの人柄や真剣な思いと経験した苦労があったればこそなんだ。
おじいちゃんの経験が生きているってことだ。
だから、安心して大丈夫。」

安心して大丈夫だということを、懸命に伝えました。

97歳にもなると脳の萎縮が進んでいます。
先日のCT検査では、年相応の萎縮があると言われました。
色々な認知機能に衰えが生じるのは当然のことです。

ただ、「気がかりなこと」は認知機能にとって大敵のようです。
特に父の場合、「気がかりなこと」が自分が苦労してきた経験とリンクすると、増幅されて本人を苦しめるようです。

2年ほど前から、小さな「バーチャル」は、日に何度も見ています。

「気がかりなこと」があるかいち早く察知して「安心」を与え、「大きな環境の変化」が起こらないよう心掛けていきましょう。



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